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大東流三
大技法の構築
鶴山先生の真価は何か、と問われれば、それは「三大技法の確立と普及」に尽きるだろ
う。従来、「合気之術」はどのような位置と意義を含み持つのか、誰一
人答えられる者はいなかったのである。久琢磨先師から鶴山先生への道統の継承がなければ、おそらく歴史から消えていただろう。
例えば、鶴山先生は昭和五十九年四月吉日付で「質問状」を出し、その中で次のように述べている。「大東流に三大技法があり、『合気之術』がその最上位に
あるということは、久琢磨先生(大東流惣角門人唯一の免許皆伝者)が、武田惣角より皆伝を許された時、初めてその真相を知らされたものです。この内容につ
いては、後日問題を起こさぬよう立ち会わせられた武田時宗にも、知らせなかった皆伝印可の一部です。(略)即ち、大東流三大技法とは、武士の階級別に指導
区
分がされており、その最上位にある『合気之術』は、『柔術』の技法や『合気柔術』の技法とも、その性質が全く異なる性格のものであり、その思想観もまた、
技法区分も、その技の理合すら、根本から違った次元のものなのであります。」
三大技法をかい摘んで要約すると以下のとおりである。
天巻 合気之術(三ケ条三十本、初中奥秘伝、無声無気合、藩主・家老・老人)
人巻 合気柔術(七ケ条四百四本、初中奥秘伝、始終無声気合、家老・中高年)
地巻 柔術(五ケ条百十八本、初中奥秘伝、無声多気合多当極め、二百石以上若年)
簡単に補説すると、まず各技法に初中奥秘伝がある。また、大東流に限って言えば、有声気合は攻撃者以外にはない。各段階の年齢や位によって、当身、無声
気合の多少や有無が決まっている。まず、柔術を学び、次にあっさりと合気之術を通って合気柔術を習得し、再び合気之術に戻ってから皆伝技の継承にいたると
いうことである。
大東流三大技法の階層性
大東流柔術三大技法(天・人・地)の体系は、旧会津藩のお留め
流(秘密の流儀)であり、殿中武芸であった。
例えば人ノ巻「合
気柔術」は、限られた上級武士だけが身に付けたものである。大声で気合を発すここともなく、御殿の畳の間で行われた品のよい武術であり、鶴山先生
は「二人ヨーガだ」とおっしゃった。また、「御信用之手」とも言われるように、技法名に敬語が使われていることにも納得のいく思いがする。
合気柔術は力技ではなく、技の種類が多く複雑で、知的戦略の養成に役立つものであった。しかも、合気柔術は、その下位にある地ノ巻「柔術」
の技法の裏をかく上級の返し技となっており、さらに、同じ合気柔術であっても、各箇条の極めを返すことでその上の箇条に進めるように工夫されている高度な
知的技法体系である。
大東流はこのような天・人・地の3層構造の体系を持ち、かつ各層の中味がいくつもの階梯を伴っている。さらに、全体の技の数も
2884手といわれており、千変万化の技法群が魅力ともなっている。この点が、為政者や経営者、また知識人にとっての魅力でもある。
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